ヒカルの碁
今回紹介するのはマンガのヒカルの碁です。
ヒカルの碁は原作:ほったゆみ先生、作画:小畑健先生による囲碁を題材にした少年マンガです。週刊少年ジャンプに連載されてました。
囲碁マンガなのにファンタジー
どんなマンガでもそうですが題材にしてる競技のルールを良く知らなくても、ストーリーが面白いとのめり込めます。ヒカルの碁はまさにそれでした。
そもそも少年マンガ誌で囲碁を題材にして連載するというのが凄いと思います。
少なくとも私の小中時代に囲碁を指せる同級生は身近にはいなかったです。
将棋以上に少年にとってプレイするハードルが高い囲碁を題材にするというのはかなりの博打だったのではないでしょうか。
それだけに、少年マンガの題材にするのが難しい囲碁をいかに少年達を惹きつけるかの努力というか設定が凄いです。
その一つが主人公の小学生に、囲碁の天才棋士の霊が取り憑くというファンタジー設定です。
普通なら例えば父親が囲碁棋士で小さい頃から英才教育を受けて天才棋士として成長していくみたいな設定(ヒカルの碁では主人公のライバルがこれ)にしたりすると思うのですが、囲碁を全く知らない主人公に囲碁を教えるのが天才棋士の霊ってこんな設定中々思いつかないですよ。(ジョジョのスタンドですね)
それ故にどこか現実感のない如何にもマンガぽいところが、囲碁に馴染みのない少年達にささったのではないかなと思います。
主人公の成長物語
ヒカルの碁ですが流石に少年マンガらしく主人公が成長していきます。
全くの囲碁初心者からプロ棋士になるまでを天才棋士の霊(佐為)だけでなく仲間達と切磋琢磨していく描き方が上手いです。
初心者の頃の学校のクラブでの楽しい感じの雰囲気から、院生になって周りのレベルが上がった時の挫折感からの復活など、佐為が憑いてるからといっていきなり強いという感じにはせずに、基本は主人公ヒカルの力で対局をして、周りのライバル達と佐為のおかげで強くなっていくという描写は如何にも少年マンガらしく、さらに天才棋士の霊が憑いているという設定も上手く生かしています。
さらにヒカルの碁で感心させられるのは、棋力や精神面の成長を描いているのは先に述べた通りなんですが、キャラの見た目の成長の描き方も実に上手いです。
物語が、主人公のヒカルが小学生から高校生(高校には行ってないですが)くらいの話で、大体の人が肉体的(身長や顔つき等)に一番成長していく時期です。
その肉体的な成長の描写が実に違和感なく描けているのが凄いです。
何年も会ってない子に久しぶりに会って「大きくなったなあ」という感じではなく、毎日見ている子に対してふと気付くと「成長したなあ」というそんな感じの描写になっています。
これは作画の小畑健先生の画力の成せる技でしょうか。
藤原佐為
これだけ主人公達の成長描写が凄いと言っておきながら何ですが、私が個人的に好きなエピソードは佐為絡みのところだったりします。(すいません)
ネタバレです。
好きなエピソードの一つとしてネット碁のエピソードがあります。
このエピソードは普段は佐為の力を借りて対局しないヒカルが、佐為に思う存分対局してもらう為にネット碁をプレイするというエピソードです。
このネット碁エピソードは、顔も素性も分からないインターネット上に、とてつもなく強い棋士sai(佐為のハンドルネーム)が突如現れ、その強さの噂が日本だけでなく世界中で囁かれていく描写が本当に面白いです。
これは普段はヒカルが自身で対局する事が殆どで、佐為の凄さは中々描写される事がなかったのが、ネット碁という匿名性の強い世界で佐為に囲碁をうたせる事によって、佐為の凄さを示すと同時にヒカルもレベルの高い対局を見る事によって成長するという一石二鳥の話で凄いアイデアだと思いました。
そしてもう一つもネット碁絡みで、主人公ヒカルのライバルの塔矢アキラの父親である塔矢行洋と佐為がネット碁で対局するという話です。
塔矢行洋は日本のみならず世界的にも有名なプロ棋士で、体調を崩して入院をし入院中に病室でネット碁をさします。
ハンドルネームは普通に自分の名前を使っていて、その強さから本物であるとネット碁の世界では認知されています。
そこにかつてネット碁の世界に突如現れ最強と噂されたsaiと対局するという。
このエピソードも周りの人間のリアクションの演出が本当に上手く、夢の対決を盛り上げてくれるので、読んでる方もワクワクドキドキしながら読めます。
私は大人になってから読んだせいか、ヒカル達の成長物語を楽しみながら読みつつも、佐為絡みの話の方が実は好きだったりします。
ちょっと寂しい部分も
ヒカルの碁は大好きなんですが、ちょっと寂しさを感じる部分もあったりします。
前述した通り佐為が好きなので、sai vs 塔矢行洋のネット碁以降の話は個人的には凄い寂しさを感じます。
少年マンガとしては致し方ないのかもしれないですが、ネット碁の対局が終わった後のヒカルや佐為のセリフを見て、「そうなってしまうのか」と嫌な予感がしたらやはりという感じになり寂しかったですね。
なのでヒカルの碁の単行本を読み返すと大体、sai vs 塔矢行洋戦まで読んで、その後は北斗杯編まで飛ばして読んでしまう事が多かったりします。
他にも寂しく思ったのは、かつての中学時代の友達や幼馴染のあかりちゃんが、ヒカルがプロ棋士になってから殆ど出番がないのも寂しく感じました。
特に幼馴染のあかりちゃんはヒカルに好意を寄せているのだから、もう少し出番を増やして欲しかったなと。
中学の卒業式の時にあかりちゃんは囲碁部の友達や先生と写真を撮りますが、ヒカルに対しては一緒に写真を撮りたいと思いながらも言い出せずに撮れずにいます。
そこにあかりちゃんからカメラを預かった同級生の囲碁部の女子の金子さんが、ヒカルとあかりちゃんが話している場面をそのカメラでこっそり隠し撮りするという場面があります。
これはエピソード的には本当にちょっとした一幕なのですが、私はこの場面が結構好きですね。
個人的な意見を言わせてもらうと、折角ここで隠し撮りした場面があるのだから、その後あかりちゃんが現像した時にこんな写真があったのかというリアクションの場面が欲しかったですし、その後あかりちゃんが出てきた時にその写真を部屋に飾ってるとかそんな場面が欲しかったなあと思います。
ヒカルの碁は少年マンガでは異色ともいえる囲碁を題材にしてますが、少年ジャンプの王道である少年の成長を丁寧に描いて大ヒットした素晴らしい作品です。
囲碁のルールを知らなくても楽しめるので、まだ未読の方は是非。